カウンセリングの周辺〔10〕 「死にたもうことなかれ」
くれないの二尺のびたるばらの芽の
針やわらかに春雨降る。
これは、小学校の教科書に載っている詩です。バラの花が美しく咲く季節になりましたね。
この短歌を創った正岡子規という歌人は、大変な痛みを伴う脊椎カリエスという病気で亡くなりました。人間の病気の中の三大激痛病の一つで毎日、毎日痛みで泣き叫ぶ日々の中で生きました。その痛みから逃げるには死んでしまうしかないと考えました。その激痛の中で書いた「病床六尺」という本の中で、『悟りとは平気で死ぬことではなく、平気で生きる事である』と書きました。死ぬ覚悟ができているぞというのではなく、何があっても死ぬまでは淡々と生きるぞという覚悟を語っていました。
昨日、近しい小学生が「Rちゃんのお父さんが死んだって先生言ってた」と教えてくれました。「病気でもなく、事故でもないって、自殺だよね」と。小学校に入学したての子が自殺という言葉を口に出したことに、びっくりしました。Rちゃんのは在職中、よく私の教室にあそびに来る子でした。ご家族の驚き悲しみは、いかばかりかでしょう。
自死する人は後を絶ちません。2013年山形県庄内地区の自殺者は92人でした。自殺理由の第一位は健康問題、第二位は経済問題、第三位は家庭問題の苦しみだそうです。Rさんのお父さんは、どんな理由からだったのでしょう。
「病床から30センチのところの目で」
瓶にさす 藤の花ぶさ みじかければ
畳の上にとどかざりけり
これも、教科書に載っている詩です。
この病気になったことに感謝したい、病気になった事によって小さな花の美しさにに気づく事ができたと述べています。
私は、Rちゃんとお母さんにしか、会ったことはありません。今、家の前にはニ尺のびたバラの苗が二十本程、咲き出しています。目の前に伸びた大木に山藤がからみつき、みごとに咲いています。Rちゃんのお父さんに見に来てほしかったです。死にたもうことなかれ。
どんなにかなしくても、
どんなにくるしくても、
長い坂道を登るのは、あなた一人じゃない。
同行二人。
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